そんなに甘いもんじゃないよ妖精

ゆうゆうのこと

※こちらの文章は、天狼院ライティングゼミに提出した課題です。
合格すればWeb天狼院に掲載されるのですが、没になってしまったため供養も兼ねてこちらに掲載します!

 

 

フリーランスになるのが夢だ。

現在、月給13万円の薄給会社員。
一応正社員なのにボーナスも昇給もなければ有給もない。
社長の気分次第で有給が下りるか下りないか変わるという実にフリーダムな会社だ。

フリーライターという夢をもった

私はもともと書くことと読むことが好きで、幼稚園児の頃からぼんやりと、
『毎朝、会社というところへは行かずに家の中で本を読んだり物を書いたりするだけで食べていける仕事に就けたらいいのになあ』と思っていた。

そういう仕事があるのかどうかもわかっていなかったけれど、
休み時間になる度にグラウンドへ走っていく男子の仲間にも入れず、
かといって女の子らしく可愛いシールやビーズを交換し合う趣味もなかった私は、

図書室の本棚の影に隠れるようにして活字を追いつつ、そう願っていた。

読み書きだけで生きていければ、と。

それ一本で生きていくには相当のスキルと根性と運の良さを併せ持っていなければならないと薄々気づきかけてきた最近、射程範囲内に入れているのはフリーランスのライター、いわゆるフリーライターという道。

きっと、自分の書きたいようなものだけを自由に書くことが許されるわけではないのだろう。

最初のいわゆる駆け出しという頃なんかは、書きたくないようなものだってまるで書きたかったような顔をして書かなければいけないのだろう。

そうやってみんな、書きたいものを書ける自分になっていくのだろう。

二足のわらじは履けない

会社員を続けながら、空いた時間で細々とライター業を始める道を最初は考えたのだけれども、
いかんせん不器用な私が二足のわらじを履けるわけもなく、早々に断念した。

やはり捨て身で臨まねば、欲した結果は得られないだろうと思ったのだ。

晴れてフリーランス転向。
まだ退職してはいないけれど、手続きは順調に進んでいる。

私がやるべきことはきっと、たくさんある。

心構え、覚悟を固める、フリーランスとして生きていくためには何が必要か、何をすべきか、安定的に仕事を得るための工夫を模索、などなど。

「そんなに甘いもんじゃないよ」

声が聞こえる。

「そんなに甘いもんじゃないよ」

これは誰の声だろう。遠くから、近くから、何人もの声が聞こえる。

「フリーランスって、そんなに甘いもんじゃないよ」

親切な人はどこの世にもいるもので、
人の下した決断を「それは止めておいた方がいいんじゃないか」と親切心で否定してくる人たちが一定数。

これは、仕方のないこと。

実際フリーランスって自由なようでいてそんなに自由じゃないって話も聞くし、
特に私みたいな人間は完全に憧れだけでものを言っているし、忠告されても仕方がない。

でもこの声は、“そんなに甘いもんじゃないよ妖精”の声。

人の好きなことを、やりたいことを、達成したい望みを、夢を、
親切心という尤もな皮をかぶってぶち壊しにくるえげつない妖精。

自分がその苦しみを感じたからこそ、また時にはそんな苦しみを感じていないくせにわかったような顔で余計なことを言ってくる輩もおりますけれど、まあ総じて親切心で言ってるんです。

ありがたい話だと私は受け止めなければならんのです。

妖精のいうことは聞かない

フリーランスとしてやっていきたいんだ、と親に言った。

親は、昔から私の言うことをちゃんと聞いてくれる人たちだったし、自分も自営業で稼いできた身だから、
辛さはわかれど頭ごなしに否定もしなかった。

あんたの好きなようにしなさい、だ。

自由に、やりたいことを自由に、けれど、それに伴う責任だって私は、等しく背負わなければならぬ。
そのこともすべて含めて“好きなようにしなさい”。

背筋が、伸びた。

私は常々、性というものをこの世からなくしたいと思っていて、
万が一結婚したいと思った対象が同性だったとしても咎められないような世界に早くなれよと思っている。

そしてもしそうなったら自分の子どもは産めないわけだけど、もしも、
もしも自分の子どもといえる存在が私にできたら、その子の判断を最大限に尊重する親になりたい。

可能性と夢を摘んで目の前で燃やすような大人にはなりたくない。
私の親が、まっとうな親で良かったと心から思う。

妖精のいうことは聞かない。
自分は安全な場所にいながら、好んで石を投げてくるような人たちの言うことは聞かない。
時間のムダだから聞かない。

そんなに甘いもんじゃないよと、言われてはいそうですかと諦める、そんな人になるためにここにいるのではなく、
辛さも苦しさも味わおうとする前のめりな人間になりたい。

やってみて、飛びこんでみて、ああ本当に辛いもんだと身を以て実感する不器用な人間臭さをもっていたい。

そんなに甘いもんじゃないよ妖精。
さよなら。